本映画祭の特徴、DCP上映。

熊谷駅前短編映画祭に参加するメリット!
・商業映画館での上映
・上映作品の中から実際に映画館で商業上映を行う
・上映作品はすべてDCPで行い、映画祭が無償で作成したDCPを希望すればもらえる

みなさん、こんにちは。熊谷駅前短編映画祭でプログラムディレクターをつとめています、木川剛志と申します。11月29日まで、上映用の映画を募集しております。ぜひにご応募の方をお願いします。応募は以下のボタンから。

また、ご存知の方も多いのですが、津田寛治さんを審査委員長に福井で開催している福井駅前短編映画祭の方でもプログラムディレクターをしています。そして、こちらの福井駅前短編映画祭の方も商業映画館での上映、そして上映もDCPで行っています。

福井駅前短編映画祭の授賞式風景

福井駅前短編映画祭の方は、2024年11月30日に開催するのでその準備が大変です。何が、大変かっていうと、こちらの開催に合わせて、ノミネート監督から預かった素材をDCPに変換しなきゃいけないんです。30分の映画で一本あたりだいたい、2時間ぐらいかかります。

DCPとは

DCPってなんだろう?っていう方も多いと思いますが、DCPとはDigital Cinema Packageの略で、商業映画館のほとんどでデジタル上映する際に必要となる映画上映素材のことです。それこそ、15-16年ぐらい前までは街中の映画館は35mmフィルムで上映していました。これがなかなかに大変なもので、上映のための35mmをコピーするだけで100万円ぐらいかかるというものだったそうです。それが時代とともにここにもデジタル化の波が。今はデータで上映をしています。ただし、映画そのもののフォーマットがまるっきり変わったわけではないので、フィルムで上映するのを再現するかのような特別のプロジェクター。それに合わせた動画形式がDCPです。

もともと、木川がDCPを自分で作れるようになったのは、福井市で大学教員をやっていた頃に、津田寛治さんが監督をつとめる「カタラズのまちで」を製作することになり、その時のクラウドファンディングについての広告を映画館が流してくれるよということになり、その時に映画館で上映する素材制作に関わったことです。メディア系の教員だったので、たいていの動画ファイルは扱えるのですが、映画館は全く違うDCPというもの。で、15秒だったのですが、作成を依頼するということになって、よくわからないので業者にお願いすると、2012年当時でも特別金額で3万円でいいよ、ということでした。当時は一円でも多く予算が欲しい時期だったので、3万円でも惜しい。自分でつくろう!と試行錯誤した過去があります。

簡単にいうとDCPはJPEG2000という画像ファイルが並んだものです。あとは色の規定も、RGBではなく、XYZ方式ということになります。このあたりを知りたい方は、この記事をぜひに。難しいように見えますが、やっていることはとてもシンプルなことなんです。ただ、このシンプルなことをやろうと思っただけで高い!

普通はDCP製作は業者に頼むことになろうかと思います。業者によって値段は違いますが、短編映画30分ぐらいでも5万円〜15万円ぐらいかかってしまいます。ちょっと前に私も長編映画を商業上映したのですが、それだと107分あり、それだと安くても15万円ぐらいかかります。さらにデータをつくってもらってもコピーをつくるのに一本25000円ぐらい。10館で同時上映だと最低、DCPだけで40万ぐらいかかるということになったりします。

それなら自分でつくろう!そう思う映画製作者も多いはず。たぶん、安定してつかいやすい、Davinci Resolveなどにも組み込めるEasy DCPだと、1ヶ月のサブスクで150ユーロ、ライセンスとして買うなら3000ユーロ、という結構な金額です。でも実は無料でも作れたりもするのです。こんな感じの記事で無料で作る方法もネット上ではいろいろ紹介されています。ただ、難しかったり、コンピュータの知識が必要だったりします。いろいろ悩ましい。それならば有料でやっちゃえ!となる人も多いのではないでしょうか。

DCPの作り方

ここでだけ、こっそり木川のやり方をおしえると、実は12年前に買ったCuteDCPという今はほぼ廃盤となっているソフトを使い続けています。いろいろなバージョンがあるのですが、私の場合はAfter Effectのプラグインを使い、After EffectからレンダリングしてDCPをつかうバージョンを使っています。

2023年に新しいバージョンが出てたりするので、ひょっとしたら今でも買えるのかもしれないです。値段は149ユーロなんでEasy DCPとかとも同じぐらいかも。ただ、こちらはずっと使えます。Mac版だと不具合なく使えるのですが、Windows版を11で使うと少し問題があったり、落ちたりする、そんな印象をもっています。どんな感じで作っているのか、そのチュートリアルの映像が以下のようなものです。

このように結構簡単にDCPがつくることができます。ただ、大変なのは、DCPは家庭環境では見ることができないので、本当にちゃんとできているのか、その確認ができないということ。最終的には劇場に渡してチェックしてもらうことになりますが、木川がYokosuka1953を全国公開するときは試写室をレンタルして、そこで最終チェックをしました。また、色味や音のズレなど、簡易にチェックするなら、DCPをコンピュータで再生できる、DCP-o-Maticというソフトを使うとイイと思います。噂では、このDCP-o-Maticもバージョンアップをして、このソフトでDCPを作ることができるらしいのですが、まだ検証はしておりません。

さて、DCPができた!ここで安心するのはまだ早い。実はここからが一番の難関がやってきます。劇場のDCPサーバーはLinuxなのです。なので、DCPをLinuxフォーマットの媒体に入れて、劇場に送る必要があるんです。もちろん、これも無料でやる方法はあるのですが、木川は、extFS for Macというソフトを購入して、LinuxフォーマットをMacで使うことができるようにしています。

フォーマットはextFS 2で行います(記事によっては、extTFS 3がいいという人もいますが、今のところどちらがいいかはなぞ)。ハードディスクは電源が繋がる方がいいという人もいますが、USBメモリーでも、以下の写真のような電源がないやつでも映画館側で読めなかったという苦情は今のところないです。

納品用ハードディスク。Linuxフォーマットで2台で劇場にピストン輸送をしています。

なぜにDCP?DCPは綺麗なのか?

日本の商業映画館はほとんどがBlu-rayでの上映も可能なので、単発の上映だとBlu-rayで上映している映画祭も多いと思います。ただ、なぜに私がDCPにこだわるのか。一つはBlu-rayはディスクなので読み取る時間がいることと、エラーで上映できないんでは?という不安がつきまとうことです(Blu-ray上映をしていた時代もありますが、事故はありませんでしたが)。そしてやはりクオリティが違います。美しく映りますし、映画館はDCPで映すためにあります。実際、Yokosuka1953だと、Blu-rayでは20GB程度のデータ量が、DCPだと120GBになります。6倍程度、データ量が多いです。そして、自分のモニターでもBlu-rayでも若干見にくい箇所があるのですが、そこもDCP上映では綺麗に映ります。やっぱり違います。

海外の映像祭だと、応募して入賞して上映が決まると、DCPで納品することを要求されることが結構ありました。その時、DCPがなかったら1000ドルでやるよ、みたいな連絡もきたりしました。なので、そこまで難しいものではないので、ぜひに自主制作の方々もDCPも作っておくことをお勧めします!もしくは!福井駅前短編映画祭、熊谷駅前短編映画祭にノミネートしてDCPをプレゼントされてください!

以上です。

執筆者プロフィール

木川剛志

熊谷駅前短編映画祭プログラムディレクター
福井駅前短編映画祭プログラムディレクター
日本国際観光映像祭総合ディレクター
和歌山大学観光学部教授

1995 年京都工芸繊維大学造形工学科入学。在学時よりアジアの建築、特にジェフリー・バワに興味を持ち、卒業後はスリランカの設計事務所に勤務する。2002 年UCL バートレット大学院修了。2012 年に福井市出身の俳優、津田寛治を監督として起用した映画「カタラズのまちで」のプロデューサーをつとめたことから映画製作に関わるようになる。監督として2017 年に短編映画「替わり目」が第9 回商店街映画祭グランプリ、2021年にドキュメンタリー映画「Yokosuka1953」が東京ドキュメンタリー映画祭長編部門グランプリを受賞し、同作品は2022年から全国公開中。観光映像では須藤カンジを監督に起用しプロデューサーと撮影をつとめた「Sound of Centro」がART&TUR 国際観光映像祭でポルトガル観光誘客(都市)部門最優秀作品賞。2019 年より日本国際観光映像祭実行委員会代表、総合ディレクターをつとめている。

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